インボイス制度が間もなく始まりますが、特に小規模事業者の方に非常に大きな影響が見込まれております。政府は、その影響を少しでも緩和するための措置を、いくつか発表しております。
今回は、その中でも特に確認したい「2つの特例」について、取り上げたいと思います。
2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する「負担軽減措置)
対象となる事業者 | 消費税の免税事業者で、 インボイスが始まるにあたって 消費税の課税事業者になる事業者 |
軽減の内容 | 仕入れ税額控除の金額を、 売上税額の8割にすることができる (特別控除税額) |
適用期間 | 令和5年10月1日から 令和8年9月30日までの日の属する 各課税期間 |
消費税の計算は、売上で「預かった消費税分」から、仕入れなどで「支払った消費税分」を差し引いた「残りを納付」するという計算になります。
この特例では、仕入れで支払っていてもいなくても、「売上分の8割を必ず差し引くことができる」というものです。要は、「売上の2割を納付」という計算になります。
同じような消費税の計算で簡易課税制度がありますが、簡易課税制度は業種毎に仕入れ率が決まっており、今回の特例は業種に関係なく8割を差し引くことができます。もともとの仕入れが少ないような業種の方には、特に有利な計算方法になります。
ただ、もともと仕入れなどが多く、売上の8割を超えるような事業の方は、特例を適用しない計算や、簡易課税を選択した計算の方が、納付が少なくなることもあります。(詳しくは、税理士の方にご相談ください)
「2割特例」が検討対象になる方
・今まで免税事業者だったが、インボイスから課税事業者になる
・仕入れなどの支払いが少ない事業をしている(売上の8割より少ない)
・申告を自分で行うので、計算が簡単な方がよい
個人事業主の方ですと、令和5年分の申告から最大で4回の申告が適用対象となりますので、事務負担の軽減にもなりますし、適用の対象になられる事業者様は、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。
少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)
対象となる事業者 | 基準期間における課税売上高が1億円以下 又は 特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者 |
軽減の内容 | 少額(税込1万円未満)の仕入れは インボイスの保存がなくても 帳簿の保存のみで仕入れ税額控除ができる |
適用期間 | 令和5年10月1日から 令和11年9月30日まで の期間 |
基準期間(個人事業者の方は、申告する年の2年前、法人の方は、申告する事業年度の前々事業年度)の売上高が1億円以下ですから、多くの方が該当するかと思います。
ただ、確認が必要なのは、仕入れなどの1回の取引が1万円未満ということです。
国税庁のHPにも記載がありますが、例えば「5,000円の商品と7,000円の商品を同時購入」は、12,000円の仕入れとなり、適用の対象となりません。(商品単価で見ない)
おおまかに言うと、請求書単位の金額ということになります。
また、期間も令和11月9月30日までの仕入れで区切れられますので、同じ年の令和11年10月1日に仕入れを行った場合には適用がありませんので、ご注意ください。
こちらの特例は予備程度に考え、可能な限りインボイス(適格請求書)の取得、保存を心掛けた事務処理が、必要になるでしょう。